心の垢離

さしずめ文章の家庭菜園のようなもの。

【MIDSOMMAR】ミッドサマー感想の記事

www.phantom-film.com

www.youtube.com

 ネムリヤモリです。

 きょうのきょう観てきましたので、今回はすぐ書きます。以下は特に配慮せず、鑑賞を前提とした記述です。

 よろしくお願いいたします。

 

 本文

 

 さっそく参りましょう。

 

 端的に申し上げると、「観たことを後悔した映画」です。といっても出来が悪かったからではなく、むしろ胸クソ悪くなることがおそらく監督の狙いであったのだろうというところを含めて、してやられたなという感じ。

 

 まず、「ラブストーリー」のタペストリーだよね。淫夢4章並のガバガバ展開じゃねえか。

 ブログ運営のポリシーに反して借りてきた言葉がつい出てしまいましたが、新しい種を入れるためにも何かの間違いでやってきたよそ者は逃すまいと必死なんでしょう。そういう土着のアレ自体は日本にもあった気がしますし、まあわかります。そういえばR-15+でしたね、という先制ジャブ的なアレ。

 

 それから、北欧神話由来の「9」とか熊の皮とかルーン文字とかの話。正直そのあたりには興味あったので、さっきまで有識者のブログ等をチェックしてました。なんでそんなに詳しいんですかね?(ありがとうございます)

 これ以上この映画に深入りしたくない気持ちの方が大きいけれども、ここはいい機会だったポイントです。

 

 では結局何が胸クソ悪かったのかというと、ホルガの人らの自我の薄さ。これに尽きます。

 

 老人ふたりの飛び降りをはじめ、現地の皆さんにまるで人間味が感じられない。

 72歳を越えたら次の世代に命を回す。それ自体はいいけれども、その前の食事のシーンとかでこれまでの人生に対する思い入れなんかを含ませた当事者同士の意味深な目配せとかあっても(私の価値観としては)不自然ではなかったと考えますが、そんなの一切なく至極アッサリしたもんでした。

 まさにあの劇的な飛び降りによって、あの村は村全体でひとつのシステムなのだと強く感じさせられましたね。人間というよりむしろ、アリやハチに近い。

 他にも、もらい泣き……と言っていいのかどうか、同調して/しようとして鳴き声を上げる場面がよく見られました。ここも怖かった。共感してる様子が皆無なんですよね。清々しいくらい白々しく、「そぶりだけやってる」のがよーく伝わってくる。この上なく不気味でした。

 

 音響等、演出にもこだわりが伺えました。なんかこう、引きずる音とかうめき声とか、文字通り迫真の効果で狂気の攻撃力を乗算していたと思います。

 印象深いのは村に向かうときの縦回転カメラワーク。犬鳴村じゃないけれども、この先キリスト教的価値観は通用しませんという雄弁なメッセージなんでしょう。

 

 中盤くらいから急ピッチで人が死んでいきます。この村において死はそれ以上の意味を持たないので問題ありませんね? 重要ではあるけど。

 

 最終的にダニーが笑えていたからめでたしめでたし、と言いたいものの、あの表情がどういう意味合いだったのかは難しいところです。

 もう完全にホルガに染まりきって自我を放棄したことの現れなのか、クソ彼氏と縁を切れてスカッと爽やかの笑いなのか、過去のトラウマやしがらみを捨てて新たな門出に胸膨らませているのか、または私に読み取れなかった別の感情か。いずれにせよ、互いに有意義な異文化交流にはならなかったようですが。

 

 幸いというべきか、私自身はダニーみたいなメンタルになったことがないので感情移入しすぎることなく観ていました。これがのめり込んでしまったらそれこそバッドトリップというか、マジで体調悪くしてた可能性が大です。

 

 あとはまあ、尺がかなり長くて疲れました。2時間超えるのはどうしてもしんどい。

 

気がつかなかったところ

 あらすじに沿った感想はそんな感じでした。

 本筋とは関係ありませんが、一見しただけではうまく読み取れなかった点がたくさんあったと思います。映画の見方含め、物事を知らなくて恥ずかしい限りです。

 

 ①ダニーの家族の末路について

 これ妹の自殺に巻き込まれたんですね。全員死んだようだということはボンヤリとわかったけれども、そういうことだったのか。

 

 ②ペレの役割について

 冒頭で横開きしていたタペストリー、ハーメルンの笛吹き男ですね。地元とアメリカとの価値観を両方知ってて「招待しよう」と思うその精神は私には理解できませんが、通して見てみるとダニーをモノにしたかったのかな? といういかにも啓蒙の低い感想が残りました。仮にそこまで計算していたとすると怖い話です。しかしこのへんはどうも的外れなことを言ってる気がする。

 

 ③血のワシについて

 あれ死んでなかったのかよ……(絶望)

 確かになにか蠢いていましたが、肺だったのかあ、と。

 

 ④愚か者の皮剥ぎについて

 ここオズの魔法使い要素でした。ウィッカーマン小屋に運び込まれる際、言われてみればカカシっぽかったです。他のメンバーも、少女だのライオン(熊)だの、いかにもという感じ。

 

 アクションゲームめいて、この経験を踏まえてもう一度観てみよう! とはとても思えませんでした。

 

おしまいに

 

 いやー、示唆に富んだ映画だったと思います。見落としがまだまだありそう。

 でもホントにもう忘れたい思いが強く、湧き上がった気持ちはこうして形にしてここに置いておきたくなる、私にとってはそんな作品でありました。だいたいが、恋愛ものの鑑賞にあまり向いていませんからね。

 

 次は頭を空っぽにして観られる、シリアスじゃない作品がいい。

 

 それでは。