心の垢離

さしずめ文章の家庭菜園のようなもの。

【企画記事】どうせホワイトデーだしガトーショコラ作ろうぜ

私です。たいへんお久しぶりです。

前回の投稿は……昨年6月!? よくないね(反省)

9ヶ月ぶりとなる本記事では、25年のバレンタイン↓に続きお菓子作りの模様をお届けします。まあこれも時期逃してんだけど……

 

kokokori.hatenablog.com

▲そんなわけで、できあがったものがこちら(先回り)。冷やす工程を含め所要時間はざっくり半日

 

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【ネタ出し】リレー企画のやつ(喜多博士の仲直り大作戦!)(仮)

〜これまでのお話〜

 

◆時系列の進展

6月〜翌年始

 

◆ひとり

・沈黙が苦手

「私が上手く話そうとしても、話せないか、無理に話して失敗する。けど他人にばかり話させていても、いずれ話題が尽きるし、自分の事を話そうとしない私から離れていってしまう」(#1)

・仲良くなりたい、でも同時に分を弁えなければならない

「寂しくて、惨めで、喜多さんと一緒にお昼を食べたくて泣いてたなんて言える訳なかった」(#1)

 

◆郁代

・ひとりのことが知りたい、話して仲良くなりたい

「後藤さんの瞳にはまだ不安と遠慮の色が見える。だから、不安も遠慮も無くなる様に何度でも言ってあげる」(#1)

・そのための手段はまだ手探り

「思えばずっと、彼女のことを振り回してばっかりだ。これでよかったのだろうか。彼女につらい思いをさせているだけじゃないのか」(#3)

・ひとりも同じ気持ちであったことが嬉しい

「驚いたような顔をしたひとりちゃんは、しかし、優しく握り返してくれる」(#3)

 

◆お互いのこと

・(ひとり)憧れ

「笑顔が眩しい。雨なのに〈太陽〉がそこにあるようだった」(#2)

話題を振れるようになっている

「あっ、あの、きた……喜多さん」

 ひとりちゃんが言う。

「もっ、もうすぐ、冬休みですね」(#3)

 

・(郁代)友達以上の気持ち? 自分でも整理しきれていない

「喜多は少し放心したが、雨の音すら掻き消す〈胸の鼓動の煩さ〉で我に返った」

「喜多には人付き合いの多い自信があったが、流石に〈誰かを支えたい〉と思ったのは初めてだった」

「自分には無い〈特別〉を持っている彼女に対して抱くのは不思議ではない〈感情〉だ。しかし憧れとは何かが違う」

「でも今はまだ『伝わらなくてもいい』と思った。だってこの〈気持ち〉はまだ芽を出したばかりで、どんな〈花〉が咲くかなんてわからないじゃないか」(#2)

 

・二人称変化の過渡期

「引っ込み思案で恥ずかしがり屋のひとりちゃんからすれば、呼び名を変えるのは結構な覚悟が必要だったはずだ。正直かなり嬉しい。ふたりの間の絆が、前よりも強まった気がする」(#3)

 

~今回のお話~

 

(原作3巻)お泊まり会の直後、押入れを覗いては反射的に逃げ出してしまったことを後悔する郁代

帰る途上の電車、脳内で放送されているのは「ダーウィンが喜多!」

しばらくぶりの登場となった喜多博士が好き勝手しゃべっている

「後藤さん⋯⋯ひとりちゃんの生態には、まだわかっていないことも多いわ」

「『内面を知ろうと近づいてみたけれど、うまくいかなかった』というおたよりが番組にも寄せられているの」

(おたよりコーナーあったのね)

いつの間にか撮影スタジオに移動している郁代

博士と向かい合う自分の様子を見れば、なぜか調査隊風の衣装に着替えている

「そこであなたには、追加の調査を依頼しようと思うわ」

せっかく仲良くなってきたのだから、逃げ出すのは本意でなかった、ということに遅れて気がつく

(命じるのも私なら、向かうのも私ってわけ? こういうの、あの子の影響かしら)

こんな状況でも共通点があることはなんだか嬉しい

「作戦を発表するわね」

いわく、鍵となるのは引き続き会話を試みること ただしひとりのペースに合わせて

 

・逃げてしまった(逃げられてしまった)ことを私以上に気にしているのでは

・サシでじっくり話し合う……のは苦手な様子(たぶん経験と容量の問題? 成績悪いのもそれが一因では)

→まずこちらの意図を伝える:押し入れの件は予想外だったこともあり反射的に引いてしまった、ごめんなさい

後藤さんのことをもっと知りたいけれど、会ったことのないタイプの人だし、よくわからない部分とか、知ったところで合わない点も正直あると思う

でも、だからってごと⋯⋯りちゃん自身を避けたり嫌ったりすることに直結するわけじゃない

むしろちょっとやそっとで嫌ったりしない、短いけど積み重ねがあるから

うぬぼれや気のせいじゃなければ、ごと⋯⋯とりちゃんからも同じことが言えると思う そうでしょう?

だから、一度にまとめるのがしんどいならひと⋯⋯うさんのペースで構わない

対面でも、LOINEのチャットでも、電話でも なんでもいい 間が開いても話題が飛んでも全然大丈夫、たくさん話そう

私は、これからもっと仲良くなるのにこうするのがいいと思った

ひと⋯⋯とりさんも、要望があったらなんでも言ってほしい

 

⋯⋯ということを押し付けがましくないよう気を付けて伝える

 

「最終的に、あなたがまた気兼ねなく名前で呼べるようになれれば、作戦は成功よ」

(私だと思って簡単に言ってくれるわね やってやろうじゃない)

 

ふと瞬きすると車内に戻っている

耳の奥には博士の声が残っている

 

「君は僕で、僕は君なんだ⋯⋯か。本当に、その通りよね」

 

仲直り大作戦の始まりだった

 

「ごとーーりちゃん!」

次の登校日、ひとりに話しかける

瞬間、パッと表情が明るくなるのが嬉しい……が、すぐに曇ってしまう

やはりどこか気まずい

 

作戦の内容を率直に伝える

 

それからの二人は、途切れ途切れにいろいろな話をした

通学の合間、ギターレッスンの前後、アルバイト中や寝る前……(夜は早めな二人)

そうしてやり取りを始めると、存外にひとりはよくしゃべる(郁代は無自覚だが、ひとりからも心を許しているということがわかるように……こう、うまいこと書く)

 

改めてひとりの物語を、彼女の考え(感じたこと)とともに聞きたい/逆もまた然り

やはり正反対な部分が多く「理解し合える」とは到底言えないものの、共通点もある

それこそ、バンド活動を通じて自分を変えたいと思っているところなど

また、お互いの欲しいものを既に持っているという考え方もあるのでは

 

milky way要素:作詞について向き合う(ネタが散らばりすぎ? 文字数厳しければ考える)

通話の頻度もぽつぽつと増えてきて、今や次子に負けないくらい

信頼も少しずつ戻ってきた?

 

そんな年度末(季節の描写入れつつ)

ふと気づくきっかけは……(雑にならないように!)

こうしたやり取りを提案したこともそうだし、最中もひとりのことを懸命に考えては、控えめな笑顔を見せてくれるのがどうしようもなく嬉しくて⋯⋯そこまでしたくなる気持ちとは、つまり

 

心の中には、いつの間にか、当たり前に一本の花が咲いている

開くのをずっと待っていたような、あっという間だったような

花びらは郁代が目にしたことのない色で、明らかで、鮮やかだ

現にすっくと伸びたそれは、彼女への思いを声高に叫んでいる

 

ああそうか、私、ひとりちゃんのことがーー

【SS】ほのぼのぼ虹生活(その3)

 5月29日。

 伊地知虹夏の生まれた日であり、すなわち後藤ひとりにとって特別な日だ。

 存分に祝いたい気持ちはあったが、そのために講義を休むことはお互いよしとしなかったので、虹夏は大学に向かい、ひとりは部屋でギターを抱えて精神集中に余念がなかった。

 

「はあ、なんとかコースは考えたけど……虹夏ちゃん、喜んでくれるかな」

 

 もとい、余念しかなかった。

 

 紆余曲折あり、この春から伊地知家の居候となったひとりは、虹夏と星歌の厚意に甘える格好で生活をしていた。高校在学時よりも取れる時間が増え、日課のギター練習やアルバイトに加えて家事手伝いと、頻繁に訪れる山田リョウとの楽曲制作に励むうち、早いもので約2ヶ月。そうした暮らしにも少しずつ慣れてきたところだ。

 この日はひとりの発案で午後からちょっとした行楽に出かけ、夜は家に戻って虹夏の初飲酒を見守る予定だった。2回生となった虹夏の時間割には少し余裕ができ、もう間もなく帰ってくるはずだ。ふと時計に目をやるや否や、聞き慣れた足音が耳に届く。ひとりは弾かれるように玄関に向かい、その扉を開いた。


「お、おかえりなさい。講義お疲れ様でした……お昼、すぐ準備しますね」

「ただいま! まあ2コマだから、そんなにだけどね。でもお腹空いたー、食べよ食べよ」

 

 前日の夜は多めに作っておいたため、基本的に温めるだけで事足りる。食器の準備をはじめ、役割分担ももう慣れたものだ。

 同棲前からデートといっては似たような流れを繰り返してきたのだが、飽きる感覚とは無縁だった。身の回りの生活やバンド活動に、巡ってゆく季節のこと。話題は尽きることがなく、また虹夏の様子も同様であることが、ひとりにとっては何よりも嬉しかった。


『ごちそうさまでした』

「あっ片付けは任せてください!」

「そう? じゃあ、お願いしちゃおうかな」

 

 こうしていろいろと家事を買って出るのは、生活の負い目も少しありつつ、一番は虹夏の役に立ちたい気持ちからだ。その思いを汲んでか、虹夏も任せてくれる局面が増えてきたが、割合は半々くらいといったところ。協力するのも楽しいから、それはそれで歓迎したいひとりだった。


「お待たせしました」

「お疲れ様! ぼっちちゃん、いつもありがとね」

「あっいえそんな! わ、私の方こそです」

「きょうのコースも考えてくれたんでしょ」

「は、はい、いちおう……夜の買い出しもありますし、本当、近場を回るくらいですけど」

「ううん! 楽しみだよ」

「じゃ、じゃあ……行きますか」

「行きましょー」


 そういうことになった。

 

「最初は原宿だね。外に出たがるの珍しいんじゃない?」

 

 駅に向かって歩きながら、虹夏が口を開いた。

 ひとりは無意識に左手を丸め、硬くなった指先の感触を確かめながら、考えをまとめる。

 

「そうですね……最近リョウさんと話したりして、少し思うところがあるんです。いろいろ見て回るのが、作詞とかの参考になるんじゃないかっていうのと……にっ、虹夏ちゃんとだったら、出かけるのも大丈夫になってきたっていうか……どこに行っても楽しいっていうか……そんな感じなので。せっかくのお誕生日なのに、私の都合なんですけど」

「そんなの全然いいよ! そっかあ……ぼっちちゃんがしたいこと、伝えてくれるの嬉しいなあ」

 

 虹夏がしみじみと言った。

 交際以前から彼女はひとりに興味津々で、小さな成長も自分のことのように喜んでくれる。そうした視線はひとりにとって嬉しくもあり、少しくすぐったいものでもある。


「私でよかったら、いくらでも付き合っちゃう! っていうか私も、ぼっちちゃんと行きたいところ、たくさんあるんだよね」

「ふふ、私も……虹夏ちゃんがいいです」

「あ、でもけっこう歩く感じになりそうだけど、大丈夫?」

「そっそれは……私から言い出したので、はい。だ、大丈夫になっていきたいな、と……」


 原宿駅にほど近い明治神宮御苑。

 虹夏に先導され、新緑と人の海を懸命に泳ぐ。並んで歩くことができればよかったのだが、残念ながら実現はもう少し先のようだ。

 しかし足を止めて景色を眺める暇がないわけではなく、ところどころで立ち止まりながら、見ごろだという菖蒲田を目指す。


「さっきの、見て回ったものを参考に~って話、もう少し聞いてもいい?」

「あっ、もちろんです……といっても、そんなえらそうに言うほどのことじゃないんですけど」

 

 虹夏が水を向けた。ひとりは一度言葉を切って息を吸い込み、頭の中を整理しようとする。


「……まず、今こうして歩いたこととか、見た景色なんかを直接『この曲にこう落とし込むぞ』っていうわけでは……ないです。うう、口に出すとほんとに大したことないような」

 

 率直に話すと、虹夏は虹夏で心当たりがあるのか、少し考え込んでいる。

 南池に差しかかった。時期には少し早いが、スイレンがちらほらと咲き始めていて、カメラやスマートフォンを構える観光客もいる。


「作詞かあ……ぼっちちゃんのはちょっと抽象的な感じだよね。あれは確かに、こう、一度飲み込んで漬け込まないと出てこないかも?」

「そ、『そうです』って言い切っちゃうとおこがましいようですけど。まあ、いろいろストックしておけば、そのうち掘り出して使えるかな、みたいな」

「なるほどね~。それでいうと、こういうおでかけで今後、歌詞の傾向も変わってきたりするのかな」

「まだわからないですね……確かにこれまでは、心の中で抱えてる気持ちをぶつけるみたいな詩が多かったと思います。でも、伝えたいこと……メッセージ性? どれもちょっとずつ違うような……すみません。とにかく、そこの部分は変わってないつもりなので」

「軸がブレてないのはバンドメンバーとして頼もしいねえ。これからも、ぼっちちゃんらしい詩を……あ、今のナシ。『らしさ』ってなんだよって話だよね。えっと……ごめん、私もうまく言えないんだけど。思うようにやってくれたら、それが一番いいんじゃないかな」


 結局、お互いに満足なまとめ方ができず、なんとも煮え切らないやり取りとなった。日々言葉を交わしても、親しい仲であっても、言いたいことを伝えるのは簡単ではない。さっきのスイレンみたいだ、とひとりは思った。
 菖蒲田が見えてくる。色とりどりのハナショウブは遠目にも鮮やかで、隣の虹夏がわあ、と小さく声を上げた。


「あっでも、丸投げってわけじゃないからね? こうやって、インプットのお手伝いもできるかもだし……なにより、私もぼっちちゃんワールドをもっと見てみたいから」

「ふふ……大丈夫です。伝わってますよ、虹夏ちゃん。いつもありがとう」

 

 それでも、こうして汲み取ろうとしてくれる姿勢や発言の意図を想像すると、ひとりにとってはもうそれで十分だった。

 

「ぼ、ぼっちちゃーん……息絶え絶えだよ、大丈夫? 一回座る?」

「だ、だいじょうぶです……あっそれより、次は新高円寺に……」

「いやけっこう遠い!」

 

 目的とは逆方向のはずだが、なぜか本殿に続く人波に吸い込まれたひとり。虹夏に救出(水揚げ)された際にはまさしく魚めいて口をパクパクさせるばかりだったが、なんとか駅の見えるところまで戻ってきた。

 

「す、すみません。言い出しておいて、こんなことになってしまい」

「平日でも人多かったね〜。ナイスファイトだよ、ぼっちちゃん! 私気にしてないから!」

「デートって戦いなんですね……」

「私も人混みはそんなに得意じゃないけど、でも楽しかったよ。また時期を変えて行けば咲いてる花とかも違いそうだし。懲りずにまた誘ってね」

 

 電車移動の最中、平謝りのひとりを虹夏が励ます。いつまでも甘えていてはいけないと決意するものの、まだしばらくはこの光景が続きそうであった。

 

「あ、ここって」

「虹夏ちゃんが私を見つけてくれた場所、です」

 

 住宅街の中の小さな公園だ。

 今では珍しくなった回転ジャングルジムの奥にすべり台やブランコが見える。

 

「ごめんねー、あの時は私、だいぶ必死で……話も聞かないで連れて行っちゃったかも」

「確かにびっくりしましたけど、でも、ここからいろんなことが動き出して……それで『今』があるんだって思ったら、その思い出がなんだか愛おしくなってきちゃって。きょうはどうしても、虹夏ちゃんと来たかったんです」

「……ね。せっかくだし、ちょっと座っていかない?」


 並んでブランコに腰掛ける。

 

「ぼっちちゃん」

 

 いつかのように、虹夏の声がする。

 

「ありがとう。あの時、ここにいてくれて……ずっと、そばにいてくれて」

 

 別々だった人生が交わる契機。その理由はお互いに伝えてあった。


「さっき、明治神宮でさ……たくさんの人とすれ違ったよね。それで私、『ひとりぼっち東京』の歌詞を思い出したよ。こんなに人の多い街なのに、誰もがひとりぼっちで。だから、みんな誰かを求めてて」

 

 歌詞を手掛けたのはひとりだがその発想はなく、歌詞とは本当に受け取った者の解釈次第だな、と当たり前のことを考えた。

 

「昔はね、家でも一人の時間が多くて、それがちょっと苦手だったんだけど……今は寂しくないよ。いつでもみんなが、ぼっちちゃんがいてくれるから」

「虹夏ちゃん……」

「なんて……言葉にするとありきたりだね。やっぱりぼっちちゃんはすごいなあ」

 

 微笑みを向けられる。虹夏は少し照れているようだった。

 これもさっきと同じだ、とひとりは思った。虹夏を見ていると、その奥にある気持ちを想像してしまって、居ても立ってもいられない。彼女のためになにかできることはないだろうか、という一念が体を満たす。

 

「虹夏ちゃん!」

「わ! どした」

「写真! 撮りましょう! 三脚持ってますよね」

「持ってるけど、撮られるの嫌じゃなかったっけ」

「いっしょに写るやつなら大丈夫です! さあ!」

「えらい勢いだな。わかった、ちょっと待ってね」

 

  当時とは逆向きに境界柵を乗り越え、三脚を設置する虹夏。慣れた様子で高さやタイマーの設定を済ませると、すぐに戻ってくる。

 ひとりはといえば、提案したもののポーズのことなど考えておらず、フラッシュの点滅に急かされるようにしてピースサインのなりそこないを構える。かしゃ、という音がやけに大きく響き、光が時を切り取った。

 

「どれどれ……うん、よく撮れてるんじゃない」

「うへへ、写真の中の虹夏ちゃんもかわいい」

「あー、もしかしてそれが目当て? 言ってくれれば撮らせてあげるのに」

「も、もちろんそんなこと……ないことはないですけど。そうじゃなくて……えっと、お部屋に飾ってますよね」

「ああ、虹夏ヒストリー?」

「です。きょうのことも、これからの私たちに繋がっていくんだって、そんな気がしたので」

「そうだね。ぼっちちゃんが一生懸命だったこと、きっと思い出すよ。ちょっと空回ってたこともね」

 

 虹夏が混ぜっ返す。いたずらっぽい表情が不意にとても眩しく見えて、ひとりは目を細めた。

 

「あう、そ、それは……虹夏ちゃんの未来から『寂しい』がなくなればいいなと思って、つい」

「もう、ほんとにぼっちちゃんは私のこと好きなんだから……しょうがないなあ、ほんとに」

 

 ブランコから立ち上がり、振り返って続ける。


「またここに来れてよかったよ。これからの写真も、たくさん飾りたいな」

 

 長くなり始めた日も少しずつ傾き、伸びてゆく影を踏んで歩く。

 このあとは下北沢駅に戻り、徒歩圏内のスーパーマーケットで買い出しをする、というところまでがひとりの考えた計画だった。

 虹夏とともにアルコール飲料の売り場であれこれと吟味し、家に帰り着いたのは19時前。ライブハウスの営業がある星歌の合流を待つには遅くなりすぎるので、本人から「気にせず好きにやるように」とお達しがあったところだ。

 

「さあ、ご飯の準備もできたしお風呂にも入った! お姉ちゃんには悪いけど、始めちゃおっか」

「は、はいっ」

 

 飲み会については星歌から頼まれているため、ひとりの肩には少し力が入っている。


「あっ、改めて……お誕生日おめでとう、虹夏ちゃん」

「わーありがとう、ぼっちちゃん! きょうから私も二十歳かあ」

「星歌さん、『そんないいもんじゃないぞ』って言ってましたね」

「まったく、こんな日に水差さなくてもいいじゃんね」

「まあまあ……初めてのお酒ですから、心配なんですよ。その分いろいろ聞いてきましたから」

「私も気をつけて飲むけど、なんだかぼっちちゃんの方が緊張してない?」

「そ、そうですね……お酒の基本は楽しく、でした」

「ふふふ。お目付け役、よろしくね」

 

 星歌をはじめ、身近な大人たちに酒との付き合い方を(もちろん初めてだと念を押すことは忘れず)聞き回ったところ、ポイントはいくつかあるようだ。

 弱い度数から徐々に試し、自分の状態を把握しながらどこまで飲めるかのラインを知ること。食事やチェイサーを活用し、後に残りにくい飲み方を心がけること。そして、信頼できる人の目が届くところで飲むこと。

 最後の柱がたった今なくなったことで、ひとりとしては相当に不安がある状況なのだが、当の伊地知姉妹をしてそのポジションに不足なしと判断されたということでもある。誇らしいような、複雑なような、結局プレッシャーがやや勝つかな、などとぐるぐる考え込んでいるひとりをよそに、虹夏は1本目を楽しげに選んでいる。


「最初は……うん、ビールにしようかな。なんとなく大人って感じだし」

「微アルってやつでしたっけ」

「そうそう、今こんなのあるんだねえ。思わず買っちゃった」

「私はコーラで失礼しますね」

「オッケー! それじゃあ――」

『乾杯!』

 

 小気味よい音を立ててグラスが合わさる。サラダや唐揚げをお供に、二人の宴が始まった。


「ど、どうですか?」

「うーん、苦いなあ」

「甘い系の方がよかったですかね?」

「どうだろ。順番に飲んでいくよー」

 

 味わいの好みはともかく、アルコール度数としてはごく低いこともあり、1本空けても虹夏はけろっとしたものだ。

 昼食時と同じように身の回りの話に華を咲かせつつ、ゆっくりとギアを上げる。

 

 用意した食事が減るのに応じ、虹夏の席には空き缶が増えていく。


「に、虹夏ちゃん……けっこういけるクチなのでは」

「そうなのかな。なんかね、回ってきた感じも確かにするけど、それよりお腹いっぱいになっちゃった」

「ちょっと休憩しますか」

「はーい、きゅうけーい」

 

 ふわふわと上機嫌な虹夏。ほんのり赤みがかった頬や若干間延びした口調からは、持ち前の善性とか無垢さといったものが凝縮されたような雰囲気が醸し出され、得も言われぬ匂いとなって漂ってくる。ひとりは内心で強烈な庇護欲がかき立てられるのを抑えることができない。

 場所を移し、ソファに隣り合って座る。

 

「ぼっちちゃん」

「はい。ここにいますよ」

「さっきも言ったけど……いっしょにいてくれて、ありがとう。おかげでいつも楽しいし、きょうのことも、いろいろ考えてくれて」

「そうですね。お誕生日は毎年来ますけど、節目のタイミングでは特に、その……い、いい思い出になればって」

「もー、なんでぼっちちゃんが照れてるのさ」

「て、照れもしますよ……! 他の誰でもない虹夏ちゃんが、こ、こんなに近くて。もうさっきからずっと、どうにかなっちゃいそうです」

「なっちゃってもいいよ、って言ったら?」

 

 平生なら言いそうもない言葉にどきりとするが、だからこそ流されてしまうのは卑怯であるように思われ、残された理性を総動員して感情にブレーキをかける。

 

「……やっぱり酔ってますね? 私の『どうにか』っていうのは、爆発とか、そういうことですからね」

「あはははは! ぼっちちゃんは変わらないねえ……でも確かに、こういう時に言うことじゃなかったか。ごめんね」

「まあ、私こそ、いつも我慢させちゃってますし」

「まだ恥ずかしい? 実はね、私もそうなんだあ」

 

 虹夏はひとりに向けていた顔を正面に戻し、視線を膝のあたりで彷徨わせる。


「やっぱり年上だし、リードした方がいいのかな、とか内心では考えてるんだけどね。ほら、ぼっちちゃん……いざって時に度胸あるっていうか、すごく引っ張ってくれること、あるでしょ」

「そ、そうでしょうか」

「私から見るとね、そうなんだよ。ライブでのことだけじゃなくて、普段から、たまに……おうちではお姉ちゃんだからかな。そういう顔を見てると、私も、そう……ドキドキしちゃって」

 

 こういった話題も初めてではないが、如何せんひとりの自己評価は未だ低く、そのような認識を自分のものとして受け入れることが完全にはできずにいた。

 それでも、虹夏が言うのだから、少なくともそう見える要素はあるのだろう。ならば、相応しい姿というものに(今は遠くても)近づいてゆくことができるのではないか。最近ではそんなことを考えるようになった。

 

「虹夏ちゃんにはこれ以上ないくらいお世話になってますからね。ちょっとでもお返しがしたいと思って……なので、そんなふうに褒めてもらえるような部分が私にあるのは、きっと虹夏ちゃんのおかげですよ。たぶん」

「ぼっちちゃん、いつもそう言ってくれるもんね。だから結局、お互い様なのかな? そもそも、別に私も我慢してるとかじゃ……あー、それはさすがにカッコつけすぎだけど。でも実際、今の関係はすごくうまく行ってると思うし、このまま仲良しでいられたら、それだけで……っていうのも本当だよ」

「あっ、私も……虹夏ちゃんがこうして気持ちを向けてくれて、もう胸がいっぱいです」

 

 お互い様、という言葉にはひとりも賛成だった。

 相手を高く買っているところも、一方で自分のことは蔑ろにしがちなところも、二人の共通点といえるかもしれない。だからこそ、あと一歩を踏み出せずにいることも。

 たとえ欠点であっても同じものを抱えていることがなんだかおかしくて隣に目をやると、思いがけず視線が重なった。そのままどちらからともなく指を絡める。

 

「楽しいね」

 

 虹夏が柔らかく相好を崩した。

 ひとりはこの時、世界で一番美しいものを見た、と思った。

 

「そうですね。虹夏ちゃんとなら、何をしても……何もしなくても、楽しいです」

 

 秒針の音が聞こえる。

 ただ二人きりだった。


「あーそうだ、空き缶片付けないと。お姉ちゃんに怒られちゃう」

「ま、まだ余力あるんですね……次はもう少し強めの、割ったりするやつも試してみますか」

「わあ、次も付き合ってくれるんだ? ぼっちちゃん優しい」

「そりゃあ……いっしょに住んでるんですから。でもそろそろ手に負えなくなりそうですし、今度こそ星歌さんにも居てもらいましょうね」

 

 虹夏の声で意識が現実に戻ってくる。

 時間を確認すると、閉店まではまだ少し間があった。星歌の皿にラップをかけ、ぱたぱたと片付けを進める。

 酔った虹夏は想像以上に刺激的で、次があるにしても心の準備ができてからの方がありがたいな、と思うひとり。しかし同時に、また見たいな、と期待もしてしまう。

 ここでの暮らしは万事このような感じで、本当に飽きるということがなかった。


「えーっと、やり残したことは……うん、大丈夫」

 

 寝る準備を整え、虹夏は部屋を見渡して指差し確認する。

 

「もうすっかりいつも通りですね」

「そんなことないよ、足元ちょっとふらふらするし。そうだぼっちちゃん、あしたの予定は?」

 

 言葉とは裏腹に動作や受け答えはきびきびとしていて、話を振られたひとりの方がたじろいでしまう。

 

「あっ、リョウさんが来てくれるので、新曲の打合せです」

「さっきのこと、絶対訊いてくるだろうけど……照れくさいからあんまり言わないでね」

「う、うーん……私が言うまでもないような気がします」

 

 実際、リョウはふとした場面で勘が鋭い。ひとりとの付き合いも長くなり、この返答にも確信めいた予感があった。

 

「それでもだよ! わかった?」

「あっはい!」

 

 虹夏も虹夏で言いながら同じように考えていたのか、否定はしてこない。

 これはいよいよ、からかわれる未来が確定しそうだった。


「それじゃ、そろそろ寝よっか」

「あ、その前にちょっとだけ……いいですか」

「もちろん。なあに?」

 

 照明のリモコンに手を伸ばそうとした虹夏を呼び止める。

 飲み会の結果次第では翌日に回すことも考えていたが、この様子なら問題なさそうだ。


「えっと、きょうは虹夏ちゃんからの『ありがとう』がたくさん聞けて、嬉しかったです。こんなにいろいろ考えて人の誕生日を祝うなんて初めてでしたけど、あと反省点もたくさんありますけど……それでも、うまくいったみたいで、よかったなって」

「この子はもう、ほんっとにもう! どれだけ私を喜ばせたら気が済むのかな」

「わあ、ふふ……撫でてくれるの、好きです」

 

 虹夏の表情がぱっと明るくなり、髪といい、顔といい、もみくちゃにされてしまう。

 優しく温かい手の感触や、心地よく鼻をくすぐる匂い。そういった幸せそのものがひとりの内側に注がれ、まるで最初から境などなかったかのようだ。

 心が通い合う実感や、いっしょにいられることが嬉しい気持ち。足りない言葉を尽くして伝えようとするけれども、伝えるそばから溢れ出してとめどない。

 見つめ合う視線の先に自らの姿を認めた、まさにその瞬間。

 

「虹夏ちゃん、虹夏ちゃんっ」

 

 ひとりは、理性の箍が弾ける音を確かに聞いた。


「将来どうなるかはわかりませんけど、それでも言いたいから言いますね。私の心は、もうぜんぶ虹夏ちゃんのものです。これからも、ずっとずっと……大好きです」

 

 言い終わった唇が何か柔らかいものに触れている。

 近すぎてよく見えないが、ひとりは無性に懐かしい安心感を覚え、このままこうしていたい気持ちに駆られる。

 実際、その安寧は保たれていたーー遠慮がちな声が耳元に届くまでは。


「ぼ、ぼっちちゃん?」

 

 我に返ったひとりは状況を把握する。

 勢い余って、虹夏の頬にキスをしていたのだった。

 この、あらゆる悪意から無縁でなければならない聖域に? 何を?

 

「す!」

「す?」

「すみませんでしたァッ!」

「い、いいよいいよ。びっくりしたけど嫌とかじゃ全然ないし。だから戻ってきてー? ほら土下座もやめる!」

 

 己の蛮行、その罪の重さからスイレン咲く池の泥と化したひとり。人間形態に戻ってぎこちない土下座を決めようとするが、そこは虹夏も慣れたもので、腕を引っ張るとあれよあれよとお互いに正座の姿勢となった。

 

「う、うう……私なんてことを」

「『いい』って言ってるよね? まったく、最後が締まらないんだから」

 

 まだ取り乱しているひとりを見かね、虹夏が手を叩く。


「はーい、聞いてください」

「虹夏ちゃん……?」

「まだお酒全部抜けてなくて、ちょっとフェアじゃないけど……そのうち、また改めて言うから許してね」

 

 虹夏としても思うところがあったのか、空気を入れ換え、気合を入れ直すように咳払いをひとつ。


「ぼっちちゃんがいつもそうやって気持ちを伝えてくれること、すっごく嬉しい! 大切な人からそう言ってもらえて、っていうのもあるんだけど……その手前のこともね」

 

 ひとりとしては逆に、こうして汲み取ろうとしてくれることや、また受け取ってはいつも微笑みを返してくれることが嬉しくて仕方ない。お説教中の虹夏ちゃんもかわいいな、などと場違いなことを考えては、慌てて話に集中する。


「私、ぼっちちゃんのこと、もっともっと知りたいんだ。だからその相手に選んでくれたこととか、あと伝えようとしてくれること自体も。最初の頃とか思い出すと、頑張ったなあって、なんか泣きそうになっちゃう」

「で、でもそれはたぶんーー」

「『私が相手だから』って? そうかな。他の人と話すのも、だんだん上手になってきてると思うよ」

「そ、そうでしょうか……だったらいいんですが」

「そうだよお。なんだったら、お姉ちゃんとかリョウと話して確かめてみなよ」

「あっはい、わかりました」

 

 小さな成長も、自分のことのように喜んでくれる。

 出会った当初から変わらない、虹夏の姿があった。


「それでね。そんなぼっちちゃんを見て、改めて思ったんだ。私の幸せはここにあるんだなって……だから私からもお願い。この先も、ずっといっしょにいてね」

「ま、そ、もっ……い、いえ。私でよければ」

「うん、ぼっちちゃんがいいな」

 

 まさかそんな、もったいない。

 自己評価が低いところもなんとか直していこうと、無意識の言葉をぎりぎりでこらえる。

 お互いに言いたいことも言い尽くし、穏やかな沈黙が訪れた。


「えっと……これでお返事になったかな。それじゃあ、今度こそ寝よう! おやすみ、ぼっちちゃん」

「はい……おやすみなさい、虹夏ちゃん。またあした」

 

 そして、寄り添って眠る二人の上には黄金色の光が降り注ぐ。

 虹夏の、21年目の朝が始まった。

【ネタ出し】ほのぼのぼ虹生活(その3)(真)

◆お話のポイント◆

カメラはひとりの背後

これまであまり経験のなかった、自発的に親しい人の誕生日を祝うこと、そうしたいという気持ちにフォーカス

出会ったきっかけ、これまでのこと、そして将来のこと

当時と比べて変わったことや変わらないものを見つめつつ、全体的に楽しく、ほんのりとセンチメンタルな感じで

 

◆これまでのあらすじ◆

この春から同棲を始めたぼ虹

ひとりはなんとか秀華高校を卒業、伊地知家の居候となる

→機を逃したお話たち(随時……)

 ①ぼ虹バレンタイン

 ②ひとりの誕生日(進路どうする? とかの話も)

 ③ぼ喜多回 卒業の歌、友達の歌

 

生活について:

虹夏は大学2回生、引き続きSTARRYでアルバイト

ひとりも同じくアルバイトしつつ伊地知家の家事手伝い、他の時間は練習/動画収録/リョウと曲作り(よく来る)

虹夏と星歌の厚意に甘えまくり面倒を見てもらっている現状は心地よいが申し訳なさすぎるため、なんとか自活の道を

→できることでお金を稼ぐには……

 バイトのシフトを増やし、最低限食費くらいは納めている+動画の広告収入(当初は全部入れるつもりだったが、相談の結果少しずつ貯金に回すことに)

 ゆくゆくは(バンド活動1本で生活できるようになるまでは)スタジオミュージシャンとしてやっていきたい思いがあるものの、協調性の面でまだ課題多し

 

そうした新生活にも次第に慣れてきたころに迎えた虹夏の誕生日

当日の過ごし方はひとりの発案:初夏の行楽→夕食は宅飲み(初めてお酒を飲んでみようの会)

 

虹夏は昼まで大学

一度帰宅して、昼食後に出発

デートというよりは買い出しがてらの散歩のようなものだが……

 

◆本文(予定)◆

 

「お、おかえりなさい。お昼、すぐ準備しますね」

「ただいま! まあ2コマだから、そんなにだけどね。でもお腹空いたー、食べよ食べよ」

 

虹夏の時間割は午前中メイン

ひとりは夜ふかしすることもままあるが、生活がすれ違うのは寂しいので合わせて起きるようにしている

この日も「おめでとうございます」「ありがとう!」は既に済ませてあった

献立はゆうべの残りで簡単に

 

『ごちそうさまでした』

「あっ片付けは任せてください!」

「そう? じゃあ、お願いしちゃおうかな」

 

こちらでの家事も手慣れてきたひとり

こうしていろいろ買って出るのは、生活の負い目も少しありつつ、一番は虹夏の役に立ちたい(そして褒めてもらいたい)気持ちから

虹夏もその思いを汲んで任せる局面が増えてきたが、協力するのも楽しいので割合は半々くらい

 

「お待たせしました」

「お疲れ様! ぼっちちゃん、いつもありがとね」

「あっいえそんな! わ、私の方こそです」

「きょうのコースも考えてくれたんでしょ」

「は、はい、いちおう……夜の買い出しもありますし、本当、近場を回るくらいですけど」

「ううん! 楽しみだよ」

「じゃ、じゃあ……行きますか」

「行きましょー!」

 

そういうことになった

出発は14時前くらい

主なコース:明治神宮御苑(原宿:14時〜15時半)→松ノ木児童遊園(新高円寺:16時〜17時)→オオゼキ(下北沢:17時半〜18時)→伊地知家(18時すぎ〜)

 

「最初は原宿だね。外に出たがるの珍しいんじゃない?」

「最近、その……私なりに考えてて。いろいろ見て回るのが、作詞とかの参考になるんじゃないかっていうのと……にっ、虹夏ちゃんとだったら、出かけるのも大丈夫になってきたっていうか……どこに行っても楽しいっていうか……そんな感じなので。せっかくのお誕生日なのに、私の都合なんですけど」

「そんなの全然いいよ! そっかあ……ぼっちちゃんがしたいこと、伝えてくれるの嬉しいなあ」

 

「私でよかったら、いくらでも付き合っちゃう! っていうか私も、ぼっちちゃんと行きたいところ、たくさんあるんだよね」

「ふふ、私も……虹夏ちゃんがいいです」

「あ、でもけっこう歩く感じになりそうだけど、大丈夫?」

「そっそれは……私から言い出したので、はい。だ、大丈夫になっていきたいな、と……」

 

明治神宮御苑

 

新緑を楽しむ、というには少し暑いかもしれない

日陰を選んで歩く

話題①経験と創作の関係(落とし込み方)について:

 

「さっきの、見て回ったものを参考に~って話、もう少し聞いてもいい?」

「あっ、もちろんです……といっても、そんなえらそうに言うほどのことじゃないんですけど」

 

「……まず、今こうして歩いたこととか、見た景色なんかを直接『この曲にこう落とし込むぞ』っていうわけでは……ないです。うう、口に出すとほんとに大したことないような」

 

宇都宮で餃子を食べたことを思い出す虹夏

 

「作詞ねえ……ものによっては特定のエピソードを歌った曲なんかもあるけど、ぼっちちゃんのはちょっと抽象的な感じするよね。確かに、こう……一度飲み込んで漬け込まないと出てこないやつかも」

(ああなんかすごくいい方に解釈してくれてる……!)

「そ、『そうです』って言い切っちゃうとおこがましいようですけど……いろいろストックというか、そう、蓄積? しておけば……そのうち掘り出して使えるかな、みたいな」

「なるほどね~。それでいうと、こういうおでかけで今後、歌詞の傾向も変わってきたりするのかな」

「まだわからないですね……確かにこれまでは、心の中で抱えてる気持ちをぶつけるみたいな詩が多かったと思います。でも、伝えたいこと……メッセージ性? どれもちょっとずつ違うような……すみません。とにかく、そこの部分は変わってないつもりなので」

「軸がブレてないのはバンドメンバーとして頼もしいねえ。これからも、ぼっちちゃんらしい詩を……あ、今のナシ。『らしさ』ってなんだよって話だよね。えっと……ごめん、私もうまく言えないんだけど。思うようにやってくれたら、それが一番いいんじゃないかな」

 

「あっでも、丸投げってわけじゃないからね? こうやって、インプットのお手伝いもできるかもだし……なにより、私もぼっちちゃんワールドをもっと見てみたいから」

「ふふ……大丈夫です、伝わってますよ。虹夏ちゃん、いつもありがとう」

 

話題②苑内の景色:

 見どころはハナショウブスイレン花言葉要素入れる? 参考:スイレンは色により「清純な心」「信頼」「信仰」「優しさ」「甘美」など)の池、藤は時期を逃したか

話題①が思ったより膨らみそうなので、途中に景色の描写を挟んでいく感じにする

 

(場面転換どうするか考えること)

 

・松ノ木児童遊園

寄り道だがどうしても来たかった場所

ひとりにとって、虹夏は最初の友達

 

話題③♪ひとりぼっち東京 要素

御苑にはたくさん人がいて、相変わらず東京という街は本当に人が多い

その中で……

 

「あ、ここって」

「虹夏ちゃんが私を見つけてくれた場所、です」

「ごめんねー、あの時は私、だいぶ必死で……話も聞かないで連れて行っちゃったかも」

「確かにびっくりしましたけど、でも、ここからいろんなことが動き出して……それで『今』があるんだって思ったら……なんだか愛おしくなってきちゃって。きょうはどうしても、虹夏ちゃんと来たかったんです」

「……ね。せっかくだし、ちょっと座っていかない?」

 

並んでブランコに腰掛ける

「ぼっちちゃん」

ひとりが公園にいた理由は伝えてある

「ありがとう。あの時、ここにいてくれて……ずっと、そばにいてくれて」

 

「さっき、明治神宮でさ……たくさんの人とすれ違ったよね。それで私、『ひとりぼっち東京』の歌詞を思い出したよ。こんなに人の多い街なのに、誰もがひとりぼっちで。だから、みんな誰かを求めてて」

 

単にずっと友達がいなかったことから着想を得たとは言えない雰囲気

 

「昔はね、家でもひとりぼっちの時間が多くて、それがちょっと苦手だったんだけど……今は寂しくないよ。いつでもみんなが……ぼっちちゃんがいてくれるから」

「虹夏ちゃん……」

「なんて……言葉にするとありきたりだね。あはは、やっぱりぼっちちゃんはすごいなあ」

「虹夏ちゃん!」

「わ! どした」

「あの、写真! 写真、撮りましょう! 三脚持ってますよね」

「持ってるけど、撮られるの嫌じゃなかったっけ」

「いっしょに写るやつなら大丈夫です! さあ!」

「えらい勢いだな。わかった、ちょっと待ってね」

 

ブランコのツーショット

「どれどれ……うん、よく撮れてるんじゃない」

「うへへ、写真の中の虹夏ちゃんもかわいい」

「もしかしてそれが目当て? まあ、いくらでも撮らせてあげるけどさ」

「も、もちろんそんなこと……ちょっとはありますけど。そうじゃなくて……えっと、お部屋に飾ってますよね」

「ああ、虹夏ヒストリー?」

「です。きょうのことも、これからの私たちに繋がっていくんだって思ったので」

「そうだね。ぼっちちゃんが一生懸命だったこと、きっと思い出すよ」

「あう、そ、それは……『寂しくない』って言ってくれたのが嬉しくて、つい」

「もう、ほんとにぼっちちゃんは私のこと好きなんだから……しょうがないなあ、ほんとに」

 

「ありがとうね。これからの写真も、たくさん飾りたいな」

 

オオゼキ

夕食の買い出し

お酒……はライブハウスにある? いくつか買っていこう

地の文で流して説明

 

・伊地知家

二人で誕生日パーティ(21時ごろ?)

→ライブハウスの閉店は23時を想定、締め作業とかもあるため……

 

「さあ、ご飯の準備もできたしお風呂にも入った! お姉ちゃんには悪いけど、始めちゃおっか」

「は、はいっ」

星歌から頼まれているため少し肩に力が入っているひとり

 

「あっ、改めて……お誕生日おめでとう、虹夏ちゃん」

「わーありがとう、ぼっちちゃん! これで私も二十歳かあ」

「星歌さん、『そんないいもんじゃないぞ』って言ってましたね」

「まったく、こんな日に水差さなくてもいいじゃんね」

「まあまあ……初めてのお酒ですから、心配なんですよ。その分いろいろ聞いてきましたから」

「私も気をつけて飲むけど、なんだかぼっちちゃんの方が緊張してない?」

「そ、そうですね……お酒の基本は楽しく、でした」

「ふふふ。お目付け役、よろしくね」

 

ポイントはいくつかあるが……

・弱い度数から徐々に試し、自分の状態を把握しながらどこまで飲めるかのラインを知ること

・食事やチェイサーといっしょに、後に残りにくい飲み方を

・信頼できる人の目が届くところで飲む

 

「最初は……うん、ビールにしようかな。なんとなく大人って感じだし」

「微アルってやつでしたっけ」

「そうそう、今こんなのあるんだねえ。思わず買っちゃった」

「私はコーラで失礼しますね」

「オッケー! それじゃあ――」

『乾杯』

 

「ど、どうですか?」

「うーん、苦いなあ」

「甘い系の方がよかったですかね?」

「どうだろ。順番に飲んでいくよー」

 

「に、虹夏ちゃん……けっこういけるクチなのでは」

「そうなのかな。回ってきた感じはするけど、それよりお腹いっぱいになっちゃった」

「ちょっと休憩しますか」

「はーい、きゅうけーい」

(なんか表情がゆるくなってる……)

 

場所をソファに移し、隣り合って座る

「ぼっちちゃん」

「はい。ここにいますよ」

「さっきも言ったけど……いっしょにいてくれて、ありがとう。おかげでいつも楽しいし、きょうのことも、いろいろ考えてくれて」

「そうですね。お誕生日は毎年来ますけど、節目のタイミングでは特に、その……い、いい思い出になればって」

「もー、なんでぼっちちゃんが照れてるのさ」

「て、照れもしますよ……! 他の誰でもない虹夏ちゃんが、こ、こんなに近くて。もうさっきからずっと、どうにかなっちゃいそうです」

「なっちゃってもいいよ、って言ったら?」

「……やっぱり酔ってますね? 私の『どうにか』っていうのは、爆発とか、そういうことですからね」

「あはははは! ぼっちちゃんは変わらないねえ……でも確かに、こういう時に言うことじゃなかったか。ごめんね」

「いえ。私こそ、いつも我慢させちゃってますし」

「まだ恥ずかしい? 実はね、私もそうなんだあ」

 

「やっぱり年上だし、リードした方がいいのかな、とか内心では考えてるんだけどね。ほら、いざって時に度胸あるっていうか……すごく引っ張ってくれること、あるでしょ」

 

(あんまりピンと来てない顔の後藤)

 

「ライブでのことだけじゃなくてね。普段から、たまに……おうちではお姉ちゃんだからかな。そういう顔を見てると、私も、そう……ドキドキしちゃって」

「虹夏ちゃんにはこれ以上ないくらいお世話になってますからね。ちょっとでもお返しがしたいんです」

「ぼっちちゃん、いつもそう言ってくれるもんね。だからお互い様、なのかな? 別に私も我慢してるとかじゃ……あー、それはさすがにカッコつけすぎだけど。でも実際、今の関係はすごくうまく行ってると思うし、このまま仲良しでいられたら、それだけで……っていうのも本当だよ」

「あっ、私も……虹夏ちゃんがこうして気持ちを向けてくれて、もう胸がいっぱいです」

 

どちらからともなく手を繋ぐ

「えへへ、楽しいね」

「そうですね。虹夏ちゃんとなら、何をしてても……何もしなくても、楽しいです」

温かい沈黙が場を満たす的な表現(頑張る)

 

「あーそうだ、空き缶片付けないと。お姉ちゃんに怒られちゃう」

「ま、まだ余力あるんですね……次はもう少し強めの、割ったりするやつも試してみますか」

「わあ、次も付き合ってくれるんだ? ぼっちちゃん優しい〜」

「そりゃあ……いっしょに住んでるんですから。でもそろそろ手に負えなくなりそうですし、今度こそ星歌さんにも居てもらいましょうね」

(ほろ酔いの虹夏ちゃん、なんというか色気が……あ、危ないところだった)

 

・二人の部屋

改めて気持ちを

 

「えーっと、やり残したことは……」

家事を片付け指差し確認する虹夏

「もうすっかりいつも通りですね」

「そんなことないよ、足元ちょっとふらふらするし。ぼっちちゃん、あしたの予定は?」

言葉だけで動作はキビキビしている

「あっ、リョウさんが来てくれるので、新曲の打合せです」

「さっきのこと、絶対訊いてくるだろうけど……照れくさいから、あんまり言わないでね」

「う、うーん……私が言うまでもないような気がします」

「それでもだよ! わかった?」

「あっはい!」

 

「それじゃ、そろそろ寝よっか」

「あ、その前にちょっとだけ……いいですか」

「もちろん。なあに?」

 

「えっと、きょうは虹夏ちゃんからの『ありがとう』がたくさん聞けて、嬉しかったです。こんなにいろいろ考えて人の誕生日を祝うなんて初めてでしたけど、うまくいったみたいで、よかったなって」

「この子はもう、ほんっとにもう! どれだけ私を喜ばせてくれたら気が済むのかな」

「わ、ふふ……撫でてくれるの、好きです。虹夏ちゃん、虹夏ちゃん!」

心が通い合う実感や、いっしょにいられることが嬉しい気持ち、そうしたものが伝えるそばから溢れ出してとめどない後藤

 

「将来どうなるかはわかりませんけど、それでも……言いたいから言いますね。私の心は、もうぜんぶ虹夏ちゃんのものです。これからも、ずっとずっと……大好きです」

ひとり、虹夏の頬にキス

 

「ぼ、ぼっちちゃん?」(酔った勢いで私がするならまだしも)

「す!」

「す?」

「すみませんでしたァッ!」

 

「い、いいよいいよ。びっくりしたけど嫌とかじゃ全然ないし。だから戻ってきてー? ほら土下座やめる!」

「う、うう……私なんてことを」

「『いい』って言ってるよね? まったく、最後が締まらないんだから」

なぜか電気をもう一度点ける虹夏

 

「はーい、聞いてください」

「虹夏ちゃん……?」

「まだお酒全部抜けてなくて、ちょっとフェアじゃないけど……そのうち、また改めて言うから許してね」

 

「ぼっちちゃんがいつもそうやって気持ちを伝えてくれること、すっごく嬉しい! 大切な人からそう言ってもらえて、っていうのもあるんだけど……その手前のこともね」

手前とは?

 

「私、ぼっちちゃんのこと、もっともっと知りたいんだ。だからその相手に選んでくれたこととか、あと伝えようとしてくれること自体も。最初の頃とか思い出すと、頑張ったなあって、なんか泣きそうになっちゃう」

「で、でもそれはたぶんーー」

「『私が相手だから』って? そうかな。他の人と話すのも、だんだん上手になってきてると思うよ」

「そ、そうでしょうか……だったらいいんですが」

「そうだよお。なんだったら、お姉ちゃんとかリョウと話して確かめてみなよ」

「あっはい、わかりました」

 

「それでね。そんなぼっちちゃんを見て、改めて思ったんだ。私の幸せはここにあるんだなって……私からもお願い。この先も、ずっといっしょにいてね」

「もっ……いえ、私でよければ」

「うん、ぼっちちゃんがいいな」

 

「えっと……これでお返事になったかな。それじゃあ、今度こそ寝よう! おやすみ、ぼっちちゃん」

「はい……おやすみなさい、虹夏ちゃん。またあした」